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社会保険労務士に合格してもその後が問題だ!
社会保険労務士は、法律系の国家資格の中では比較的合格しやすい(8~10%前後)の割に、独立にも転職にも有利な資格なんで20年以上前からずっと人気の資格の1つです。
ただ、社会保険労務士は、人事、労務に絡む仕事ですので、仕事で活かせるようになるにはなによりも経験が大切です。
そのため、同じ社会保険労務士に合格しても資格の力を活かして年収が上がるかどうかは、職種や業種、会社の規模によって大きく変わります。
せっかく社会保険労務士を取るならどういった仕事なら資格を活かせるのか、どのぐらいの会社の規模や業種ならその仕事の量が多くたくさん経験を積めるのか。
今回は社会保険労務士の資格を持つ私が、その点をしっかりとお伝えしたいと思います。
社労士の資格が活かせる仕事
1,給与・賃金コンサルタント
給与・賃金コンサルタントとは、社員の給与をいくらにするか決める仕事です。
簡単そうですが、給与には大きく、『年齢給』『成果給』『業績給』の3つがあります。
成果給とは、仕事で結果を出した者には高く、結果を出せなかった者には低く評価して決める給与体系
業績給とは、会社全体での成長に応じた給与体系
この3つの組み合わせで決まります。
しかも、各年齢ごとで不公平感がでないように社員の説明が不可欠で、途中で大きく給与を変えると、『不利益変更』とみなされて無効になってしまうので最初に一度、決めるとその後の変更がなかなかやりにくいのが特徴です。
この仕事は作業量が多く、経験も必要なため報酬は非常に高くなります。
1回の案件で100万円以上の報酬をもらえます。
2,就業規則作成コンサルタント
就業規則とは、経営者が定める社内でのルールのことです。
労使協定と違って、労働組合の意向は一切は要らないので、基本的に社長がどういう会社にしたいのか、という想いをしっかり汲み取って作成します。
記載内容は絶対的必要記載事項と、相対的必要記載事項の2つあります。
絶対的必要記載事項
必要の有無にかかわらず絶対に記載しなければならない事項が絶対的必要記載事項です。
1,労働時間に関すること
- 始業、終業の時刻
- 休憩時間の長さ、与え方
- 休日の日数、与え方
- 休暇:年次有給休暇、産前産後休業、生理休暇、特別休暇など
- 就業時転換に関する事項:交替期日、交替順序等(いわゆる代休や振替休日のこと)
2,賃金に関すること
- 賃金(臨時のものは除く)の決定、計算方法(賃金の決定要素と賃金体系)
- 賃金の計算方法
- 賃金の支払の方法は直接支給なのか銀行振込か
- 賃金の締切日・支払日:月給、週給、日給の区分。月給、週給は月の何日に締切って、何日を支給日とするか
- 昇給に関する事項:昇給の時期、その他の条件
3,退職に関すること
- 退職、解雇、定年の事由
- 退職、解雇、定年の際の手続き
こういった事項は絶対に記載しないといけないので絶対的記載事項とされています。
相対的必要記載事項
もし、定めるなら、必ず記載しなければならない事項が相対的必要記載事項です。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算及び支払の方法、支払の時期:勤続年数・退職事由等の手当額決定要素、一時金と年金の区分、減額
- 退職手当を除く臨時の賃金等(賞与、臨時の手当等):一時金、臨時の手当等
- 最低賃金額
- 労働者の食費、作業用品費その他の負担
- 安全及び衛生
- 職業訓練に関する事項:訓練の種類、期間、受訓資格、訓練中後の処遇
- 災害補償及び業務外の負傷や病気の扶助に関すること:法定(外)の補償の内容
- 表彰・制裁:表彰の種類と事由、懲戒の事由、種類、手続き
- このほか、当該事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合においては、これに関すること:休職、配置転換、出向、出張旅費等
会社内での社員のトラブルは必ず起きるものです。
トラブルが起きる前に、起きた後にどうするかを考えて定めるのが就業規則です。
書店で販売されている就業規則の雛形は労働者側に立った内容となっていますので、会社にとって不利になります。
そのため、社長の話と想いを汲み取ってオリジナルのものを作っていくことが大切なので、経験と法的知識は絶対に必須です。
こちらも非常に高い報酬をみこめます。
3,退職金コンサルタント
退職金をいくら、誰に支払うのかを考えるしごとです。
1945~1955年頃に生まれた第一次ベビーブームで誕生した人たちの退職が一斉に始まる時期なのでこれから非常に需要の高い仕事です。
ただ問題は、高度経済成長時につくった退職金規定は会社の継続的な発展と、会社に潤沢なお金があることを前提とした規定なので、今の低成長時代の会社には適しません。
そのため、会社の事情と経済の状況を社員に説得しながら、規定を作り変える必要があるので、非常にデリケートな仕事で、頭も心も使います。
社員の痛みを最小限にしつつ、信頼を損なわないように規定を作り変える必要があるので、非常に高度な説明力と会社の資金力と経済成長の見込みなどを計算できる数学力が必要です。
そのため、やはり報酬は非常に高くなります。
4,給与計算代行
給与計算代行は、社内に人事部や総務部がない会社に代わって社員の給与を計算する仕事です。
平成26年経済センサス基礎調査によると、日本全国382万社のうち大企業の割合は0.3%で、残りの99.7%は中小企業です。
さらに中書企業のうち、社員数20人以下の小規模事業者の数は325万2000社ですので、85.8%の会社は人事や総務部は無いと思ってください。
そういう会社は社長自身が給与計算を行っているか、もしくは社労士などに外注しています。
そのため、仕事の数としては非常に多く見込めます。
ただ、会社によって残業の計算方法はバラバラですので、1社ずつ給与の計算方法をヒアリングする手間はあります。
また、給与計算は間違えると会社と社員の信頼関係を潰してしまうのでとても慎重に行う必要があります。
その割に、単調業務なのであまり大きな報酬は見込めません。
数で稼ぐ仕事と言えるでしょう。
5,社会保険の手続代行
社員が入社、退職、産休、育休したり、扶養者が増えた場合に社会保険の手続きが必要です。
その手続を代行するのが社会保険の手続代行です。
特に複雑ではないのですが、市町村ごとに用紙が異なっていたり、役所の対応がバラバラだったりするので意外と一筋縄では行かない仕事です。
役所も仕事が丁寧とは言えないので、提出したはずのものを無くされたりすることもあります。
また、手続きが遅れると社員の年金が減ったり、健康保険の加入時期が遅れて病院に行けなかったりするので迅速かつ丁寧に行う必要がある少し手間のかかる仕事です。
3年ほど続ければある程度、分かってきますので専門性は高くない仕事です。
そのためこちらも単調業務なので大きな報酬は見込めず、数で稼ぐ仕事と言えます。
社労士の資格が活かせる職場
1,社労士事務所(10人以上の中規模以上)
社労士の資格が最大限に活かせる職場は、間違いなく社労士事務所です。
ただし規模としては10人以上の社労士がいる中規模以上という限定付きです。
社労士の数が少ないと、どうしても大型案件が扱えなかったり、業務に偏りがでます。
実際に1人で運営している社労士事務所だと顧問先の数はせいぜい10~20社程度でしかも零細企業ばかりです。
しかし社労士としての経験を積みたければできるだけ多くの数をできるだけ短期間に集中してこなすことが必要です。
10人以上の中規模以上の社労士事務所だと必然的に中企業、大企業の案件が多く、チームで仕事をこなすことも多いのでたくさんの先輩から学ぶことができますので成長速度は非常に早くなります。
2,税理士事務所(10人以上の中規模以上)
法的な問題はあるかもしれませんが、税理士と社労士は仕事がダブルところがたくさんあります。
年末調整や給与計算も税金が絡むので事実上、どちらの事務所も行っています。
また、税理士事務所は会社の売上や利益のデータを握っているので必然的に賃金制度や退職金の相談も入ってきます。
そのため社会保険労務士としての経験を積みたければ税理士事務所も大いに可能性有りです。
また、税理士事務所の良いところは業種ごとの利益率や売上の数字を生で見ることができるのでその後に転職しても独立してもその数字に基づいたビジネス展開ができるという点です。
税理士事務所に勤務していた経験は実はこういったところで役に立ちます。
だから会社のことをよく知りたいという社労士は社労士事務所以上に税理士事務所に勤務することをおすすめします。
実際に税理士事務所に勤務する社会保険労務士は想像以上にたくさんいます。
税理士としても業務範囲を広げようと考えている場合、社労士は非常に重宝されます。
3,弁護士事務所(10人以上の中規模以上)
なぜ弁護士事務所?
と思うかもしれませんが、今の裁判(審判、紛争を含む)で労働関係のトラブルは急増しています。
弁護士は司法試験で憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法の7つの法律しか学びません。
労働法は自分で勉強して、経験して身につけます。
だから、どうしても労働法絡みに詳しくありません。
その点、社労士は労働法の専門家です。
しかし、社労士に法定代理人の権限がありません。
そのため、弁護士事務所では重宝されます。
4,500人以上の一般企業の人事部・総務部
500人以上の社員がいる一般企業の人事部、総務部は必然的に仕事量が多く、社労士としての経験を積むことができます。
本社だけでなく地方に支社もありますので、都市部以外の地方の働き方、考え方なども学べるのでより一層深みがまします。
ただ、気をつけないといけないのは、『独立するための経験を積みに来たのか?』と思われる可能性がある点です。
そのため、社労士の資格を持って企業に就職する時は、独立の意思はまったくないことを伝えましょう。
と言えば、かなり説得力があります。
5,独立開業
転職用で社労士の資格の話をしましたが、独立開業もおすすめです。
社労士の仕事は人に関わることなので必然的に幅広くなります。
ただ、独立するなら仕事を遂行する専門家としての力と言うよりも営業力が必要になります。
自分で仕事を掴み取ってくるスキルです。
そのため、営業畑で仕事を取ってくるのに慣れていたり、Webを使って集客するのが得意という人でない限りは、いきなり独立開業はおすすめしません。
社労士の資格を活かせる一番のオススメの転職は?
私のおすすめは2つです。
- 500人以上の一般企業の人事部・総務部への転職
- 税理士事務所(10人以上の中規模以上)への転職
この2つは社労士という仕事だけでなく『会社』という組織をビジネス的観点から見ることができます。
そのためここでの経験は、将来もう一度、転職したり、独立開業することになっても非常に強力な武器になります。
しか500人以上の一般企業や中規模以上の税理士事務所は待遇も良いので、給与面や休暇の取りやすさでも非常にお得です。
社労士の資格を取った人の転職戦略
1,社労士の資格を生かすために必要な経験
社労士の資格を活かすために必要な経験は、知識もさることながら、『社員間、労使間のトラブルに揉まれること』です。
意外かもしれませんが、本や研修で学ぶ労使間トラブルと現場でのトラブルは熱量が違います。
社員は1人1人が生活がかかっているので自分の給料や待遇を下げられることに命がけで抵抗してきます。
会社も存続がかかっているので社長や役員も必死で説得します。
そんな中に『法律はこうだから従いなさい』なんて言うと火に油を注ぎます。
1人1人の悩みに寄り添って真剣に考え、話すという地道な行動を1年以上続けるなかで信頼が築かれ、互いに歩み寄れるようになります。
そんなことを気づくにはやっぱり生の現場に触れてこそです。
だから、トラブルから逃げないことです。
社員間、労使間のトラブルは面倒だから避けようとしていると、社労士としてのスキルはずっと低いままです。
逆にそこに飛び込んで解決していく経験を重ねれば非常に大きな経験となり、社労士としてのスキルが一気に高まり、転職しやすくなります。
2,独立の意思は絶対に口に出さない
すでに書きましたが、転職の時に独立の意思は絶対に口に出してはいけません。
独立できる資格を持った人が応募してくると採用担当としても警戒します。
能力の高そうな見込みはありますが、なによりもせっかく採用し、育てた人材がでていくことを恐れているからです。
だから、転職活動で社労士の資格をアピールする時は、社内で活かすということをひたすら押してください。
資格を取得した目的も会社内で活かしたいからという方向で押してください。
資格を持っている人は、採用担当の信頼を勝ち取れば間違いなく大きな武器になります。
社会保険労務士を活かした転職の鉄則:まとめ
社労士は転職で使える資格であることはまちがいありません。
ただ、資格は取得しただけだとただの肩書にすぎません。
経験を重ねることで本物のプロになれます。
だから、経験を重ねられる職場を選びましょう。
資格をどう活かしたいのかを考えた上で転職先を選ぶことです。
人事コンサルタントとして活躍したいなら、社労士事務所でしょう。
利益や売上などの経営コンサルティング的な活躍をしたいなら税理士事務所です。
日本中で幅広く経験していろんなことを学びたいという知識欲の高い人は大手企業です。
いずれにせよ、自分で転職先を探すのは骨の折れる作業です。
だから、せっかく取った社労士の資格を活かしたいなら転職エージェントを活用することが転職成功の鍵になります。
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